激甚災害の早期指定は無意味?

高度な詭弁ですね。

被災しててテレビはまともに見てなかったから知らなかったけど、なんか激甚災害指定は性質が違うから急ぐ必要はないとかやってたとかなんとか。
何度見てもほれぼれするほどの高度な詭弁だね。この考え方には大前提の2つが決定的に欠けているが、世の中の仕組みについて広く知ってないと絶対に見抜けない。

詭弁その1:激甚災害指定は、自治体の申請がなされ被害額の算定が完了しないと始まらない

完璧なウソです。激甚災害法に定められているのは支援内容と指定の最終的な基準だけです。被害の算定方法や申請の方法は定められていません。
詳しい内容、手順、算定方法はすべて『政令による』ものです。政令とは法律ではありません。決定的に違うのは、議会の承認を得る必要がなく、法律より下位で時の政府がその都度内容を定めることのできるものという点です。
とどのつまり、地方自治体が機能不全等、手続きが難しい状況の場合、必要に応じて政府が算定を代行しても、未確定の概算であっても何ら問題はないということです。

実際、熊本地震に関する激甚災害指定は政府試算での指定が行われました。手続きが云々言ってた人の立場がないですね。

詭弁その2:激甚災害指定はインフラ交付金の増額がメインで確定も年度末だから、遅くても救護や復興支援には影響ない

パッと見は間違ってませんが、ここには2点、前提条件が決定的に欠けてます。地方財政法による制限である、『単年度主義』『総計予算主義』です。とどのつまり、現実の財政に基づき透明性の高い根拠ある堅実な予算運営を義務付けられているわけです。

『単年度主義』とは、収入や費用の年度跨ぎの繰り越しは原則認められないということです。収入に関しては、手元にあるお金なので財政的根拠がすでにあり、ある程度繰り越しは認められます。
しかし、費用の繰り越し、債務の繰り越しは特定の厳しい条件以外認められません。要は勝手に返す保証のない借金をするな、ということです。これはたとえ災害復興費用でも同じことです。

『総計予算主義』とは、透明性と堅実な運営のため、収入と支出は確固たる根拠を明示し、予算に計上しなければならないということです。端的に言えば、『今年は○○円の収入が間違いなくあります。今年は○○円の支出がこういう理由で必要なのでどの収入をどれだけ使います』と宣言してからしかお金を使えないのです。
要するに、いくら臨時で支出が増えようとも、勝手に借金はできないし、根拠ある財源がない費用を計上することもできないということです。

さて、では現実の熊本に目を向けてみますと、4月14日という年度が始まったばかりの時期に震災が訪れてしまったわけですが、熊本が支出する費用は熊本地震にかかわる災害救援活動費用や災害復興費用だけではありません。
これから梅雨の時期です。台風も来るかもしれません。予備費という予想外の出費の備える予算や災害のための積立金もありますが、それにも限界があります。将来のために使い切ることはできません。

他方、年度途中で予算切れを起こした場合、その行政機能は停止します。非常時だからどうにか特例をとのたまっても無理なものは無理です。アメリカ議会の予算承認ができずに施設の一部が停止したのは記憶に新しいことです。
なので、行政は予算切れの懸念が発生する場合、支出を絞って使途を限定せざるを得なくなります。つまり、激甚災害法に限らず災害救助法などの災害時における財政支援策とは、使途が限定されているものの、不意の支出で発生するであろう根本的な収入不足に伴う行政の財政的な機能停止を未然に防ぎ、予算限定などで活動の縮小・遅延が発生しないよう効果的な支出を支援するのが目的です。

復興費用がたとえインフラや雇用関係に限定されていようと、激甚災害指定によって増額されることが確約されている時点で財源として明確な根拠になります。使途が限定されていようと、圧迫するはずのインフラ予算が交付金の増額で緩和されるということは、災害の規模が大きくなればなるほど、他の予算編成にも著しい効果が及びます。

財政支援面でいえば、政府は別途、地方交付金交付税の前倒しを行いましたが、これは前倒しで当座の資金切れを防ぐ効果だけであって、前倒しで収支が改善することはありません。
別の面で見れば、来年度以降の熊本県の自治体の収支は、災害復興費用の増加と産業の停滞等での減収で、確実な財政悪化が見込まれます。将来的にも財政が苦しいと分かっているなら、当然、支出を絞るか地方債でツケを回すかになり、結局大きな傷跡を長期にわたり残すことになります。

現実の行政運営、収支の悪化を鑑みれば、激甚災害指定などの直接・間接を問わない財政支援が早急に成されなければ復旧・復興・被災者支援は滞ることは明白です。
例えば、4月27日に熊本県知事の専決処分で決定された、仮設住宅建設費などを盛り込んだ4月の補正予算366億も、早期の激甚災害指定がなければ予算規模の大幅な縮小の可能性すらあったということです。

結論としては、激甚災害指定は災害救助法の範囲では影響はないが、大きな災害ほどその次の初期復旧や早急な被災者支援をシームレスに行えるかどうかの重要なファクターであり、少なくとも今回の熊本地震において早期指定にはとても大きな意義があるものです。

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